2022年12月27日 朝5時半 新たなホームポートとなる51海里先の相生港 野瀬ボートパークに向けての単独回航に出発。 一文字ヨットクラブのビジターバース(前向き左舷付け)から独り寂しく離岸せねば。 桟橋から艇を手で押してから飛び乗るのではなく、エンジンとスプリングを操作して艇に乗ったままスマートに離岸するはずだった。バウにしっかりフェンダーをかまして バウスプリングを行って来いにして いつでもlet go 緩められるように設定して 微速前進。 これでスターンが十分スターボード側に振ってから、ギアを後進にして 左舷付けしているポンツーンから上手に離れるつもりだった。
(漆黒の一文字沖)
スターンが思い通りに右に寄ったので、さぁ、行くぞ。ところが、ヤマハマーク2のYS8エンジンと違って、プロペラが逆回転なのでアスターンに入れるとスターンは左舷側に引っ張っていかれてすぐにポンツーンに戻ってしまい。なかなかポンツーンから離れられない。
何度か少しずつ繰り返して、右へもっとスターンを振ってから バックギアへと 焦りながら ようやく離岸。(もっと明るいときに練習しておくべきだったと反省。須磨から一文字にやってきて結局一度も出航したことがなったので、この艇の低速時prop washの癖が体で全く分かっていない。)【最も重要なことを思い出した。こういうことになることを想定して最初から『出船』状態にしておけば良かった。一文字に着岸するときは風が弱くてかつ西風だったので、出艇することを前提にバウを海側に向けて右舷付けで係留できるように、バックで入港すべきだったのだと後で気づいた。】
ナビゲーションは、限定沿海の艇なので 主にnew pec smartをインストールしたipad と iphoneと安直。モバイルバッテリーをつないでいるので電池切れの心配もない。
AIS送信とVHFも常時ON。JRCレーダーはOFF。オートパイロットも準備OK。
携帯電話と双眼鏡を首にかけ。ハーネスとテザー2本もばっちり。装備の最終確認、OK。
さぁ、西宮を出るぞ。いざ出発。(ここは堀江さんが太平洋独りぼっちの旅に出た まさにその地点なのです。旧西宮ヨットハーバー隣)
コンパニオンウェイ上のハッチに張ったジャックラインを男らしく握りしめ、乗馬のときの手綱のようにつかんで、一人立って寒風を楽しむ。(サブぅ~)(そんなに寒くないだろうと思ってmustoのmpxはキャビンのハンガーにかかっているし 濡れないだろとおもってブーツも戸棚の中、着ているのはワークマンで買ったレインジャケットと40年前に買ったフリースとデッキシューズ)
新西宮からレース艇でいつも出入りしている一文字の『赤灯台』を出る6時半過ぎ頃には 少し明るくなってきた。
この近辺はAISでは映らない船が結構行き来している。 AISでばっちり写っているフェリーのサンフラワーは『そこのけ そこのけ』と言わんばかりに前照灯をドバッと焚きつけてきた。こちらのAIS信号で自艇の針路も見えているはずだが、淡路の八木田さんに教えてもらった通りに大げさに変針して『こちらが避けますよ~』との意図を明らかにする。
神戸空港の北側の橋の下を西に抜けて通ろうとも思ったが、シングルハンドなのでまさかに備えて、空港の南側の障害物のない広い海域を通ることにする。 空港沖で朝日を眺めながら、まずは行き足を止めて風の方向をしっかり確認して、オートパイロットで風上に立てて微速前進にして、メンスルを上げる。穏やかな神戸沖。
それからはずっと 北西や西風だったので タックを繰り返しながら 明石海峡大橋を9時半に越える。
連れ潮で最高瞬間速度10ノットまでSOGが伸びる。
大鳴門と明石海峡を以前にもシングルハンドでの通過経験しているので、少しぐらい渦に翻弄されても もう焦らずに冷静でいられる。
しかし、これまでに経験したことがない体の異常が発生。 足の裏がつるのである。それも両足とも頻繁に。右手の人差し指と中指もつる。ピクピク動く。 こむら返りはこれまで2回しか経験したことがないので、ちょっと焦る。 ゴルフ好きの友達から こむら返りのときは キャディーさんからもらった ツムラの68番 が良く効いた と聞いて準備していたはずなのに救急箱にそれがない。 家に忘れてきたのである。 仕方がないので靴を脱いで指圧してみる。 でも足も手もちょっと異常なまま。
AISのトラックでは明石海峡の航路を越えているようになっているが、実際にはちゃんと航路の北側だけを進んだ。どうやらAISの送信間隔が間延びしているので 現実のコースをきちんと表していないようだ。そのあとも直線ばっかりだけど、本当はちゃんとタックしながら進んだのに。
相生手前までは 双眼鏡目視で確認していた漁船、 ポール2本からケンケン?を引っ張っている漁船に1回警笛を鳴らされただけで、何の問題もなく 航海自体は順調。
(標識の写真を撮ってみました)
相生湾に入る前の午後3時頃からは15kts から20ktsの北西の風が吹き出して、セーリングではまだ慣れていない艇だしと自分の強風セーリング技量を越える前にと 入港準備を早めに、かなり前に1ポンだったメンスルを完全に降ろしておいて良かった。 エンジン快調。 あ~、楽な回航。 Mさんに教えられた通り、『ヨットはエンジン』と実感。この岡崎造船で交換設置なさった2GM間接冷却は最高!
相生湾には小鳴門の入り口と同じように大型船の気分でトランシットを使って堂々とど真ん中から入る。湾内は外と違ってだんだん穏やかな海に。さすがIHIの本拠、天然の良港という通り。 湾の入り口からボートパークまで小一時間かかる。
八木田さんに去年教えてもらった通り、ボートパーク手前でアスターンのギアがちゃんと入ることを確認した。 そして、フェンダーを降ろして、単独着岸用にミジップからの行って来いロープ、バウラインもライフラインの上にも準備する。 すんなりと入港せずに、ボートパークの外側で、自艇の低速動きがよくわからないので 後進の練習、スタンディングターンを何度も練習。 その様子を見て心配してくださったB埠頭のNさんからお声がけあり。
無事4時半に野瀬ボートパークのB埠頭の先端に とりあえず横づけで着岸。 航海自体は11時間。タックを繰り返さずに、機走だけで来た方が早かっただろうが、これも練習だから。
相生野瀬ボートパークに着いたら、何かが燃えた、ベークライトが焼けたような異様な匂い、まさかエンジンルームが焦げているのか?
いいえ、匂いのもとは対岸の造船所からの悪臭。自艇からのにおいでなかったのでほっとして。
お湯をプロパンで沸かして 暖かいコーヒーで休息。
一昨日から単独回航の準備で 結局34時間も全く睡眠なしだったので、舫をしっかりとったらすぐに熟睡。(パールレースや大阪湾レースでのオーバーナイトレースで一睡もしない ほとんど食べないヘルムズマンやタクティシャンを間近に見て驚いたが、今回やってみて使命感責任感が伴うと案外寝なくても食べなくても平気だということが分かった。柔な私もシングルハンドでスキッパーになると緊張感からほとんど眠くもならなかったから。)
一晩ヨットに泊まって、早朝の室温は摂氏2度。
サブっ~。
これからしばらくは ここが私のArctic Tern IIIのホームポートになります。
追記:12月下旬だからと日焼け止めクリームもマスクもせずに11時間も海をみていたら、到着2日後には唇がカサカサになっていた。タラコが焼けたみたいで、下唇がただれて血だらけに。冬もやっぱり紫外線対策が必要なのだということを思い知らされました。(相生のウエルシア薬局で口角炎・口唇炎用にロート製薬 メンソレータム メディカルリップ医薬品を買って塗ったら2日で良くなりました。)
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